診療科長のご挨拶ページ
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診療科長のご挨拶

熊本大学・大学院生命科学研究部・神経精神医学講座へようこそ

竹林実教授
 当ホームページを訪ねて頂いてありがとうございます。熊本大学・神経精神医学講座は、1904年に開講された伝統のある教室であり、統合失調症やアルツハイマー病の死後脳研究、水俣病や三池炭塵爆発の調査研究、認知症の臨床研究など生物学的精神医学を柱として、診療・研究・教育を行ってきました。
 精神科医は、全人的な視点で治療に取り組み、患者さんとともに歩み成長できる、とても魅力ある仕事です。また、新しい診断・治療法の開発やこころの仕組みを解き明かすことができる無限の可能性を秘めた脳科学が応用できる仕事です。

最善の治療を実践

 治療は、精神療法(カウンセリング)、薬物療法、ニューロモデュレーション治療、精神科リハビリテーションの4種類をうまく組み合わせて、精神科医だけでなく、麻酔科医、看護師、心理療法士、作業療法士、精神保健福祉士などの多職種の医療チームとして最善の治療をすすめていきます。また、身体疾患をもつ精神疾患の治療を、さまざまな診療科と連携しながら行うリエゾン精神医療は、総合病院のなかの精神科である当科の大きな役目になります。特にがん患者さんに対しては、緩和ケアチームとして精神科医が加わり、こころと身体の総合的治療を行います。
 診断については、通常の症状の理解だけではなく、ご本人・ご家族・他の医療者にもわかりやすい客観的な方法(心理検査、脳画像検査、血液・髄液検査、光トポグラフィ検査など)を積極的に取り入れ、的確な診断とわかりやすい説明をいたします。使用する薬剤はご本人にあう最良のものを、最新の薬理学的知見と経験とを照らし合わせて慎重に吟味して使用します。また、治りがよくない統合失調症や気分障害の方に対しても、難治性治療薬クロザピン、修正型電気けいれん療法(ECT)・経頭蓋磁気刺激療法(TMS)などのニューロモデュレーション治療を選択肢として用意しています。さらに、症状改善後も、社会復帰、再発予防、リワークを目指した独自のリカバリープログラムを用意して、入り口から出口までのトータルな治療を提供します。

エキスパート精神科医を育成

 医師免許取得後、「自立性」と「客観性」を両立した、精神科医のエキスパートの育成を目標としています。前期研修プログラム、専門医研修プログラム、サブスペシャリティ研修プログラムを基本とした柔軟なローテーションプログラムを準備し、精神科専門医、精神保健指定医の資格の取得を目指します。また、熊本大学病院は、総病床数848床のうち精神科病床50床(開放ユニット38床、閉鎖ユニット12床)の県内唯一の特定機能病院であり、外因・内因・心因性精神疾患と多彩で、精神科研修に非常に適しています。専門医研修プログラムは①当大学病院を軸に、連携施設である②総合病院精神科、③精神科専門病院の3つで構成し、それぞれの場が持つ特性を存分に生かした専門研修が行えるよう配慮します。医師として5年目以降にすみやかに精神科専門医と精神保健指定医が取得できるように資格取得を全面的にサポートいたします。
 また、精神科医療は必ずしも客観性が十分とは言えない領域もあるため、精神科医の「客観性」の涵養として、科学的思考のトレーニングが欠かせません。専門医研修プログラムで症例検討会、学会発表、症例報告論文作成、リサーチカンファレンスなどを通じて、科学的思考プロセスの初歩を学びます。希望者は大学院で、脳科学に関する研究を行い、科学的思考プロセスをさらに磨きます。研究をすれば臨床のとらえ方も変わります。科学的思考を身に着けた上で、エキスパートとして自立した精神科医になって頂きたいと考えています。なお、熊本大学・神経精神医学講座では、早期からの大学院の受け入れ、経済的にも支援する「柴三郎プログラム」や専門医機構の臨床研究医もすすめています。この制度を利用すると、卒後臨床研修と大学院を同時に終了することができますので、ご希望の方はご連絡ください。
 研修プログラムは各医師の特性・興味に沿った柔軟なローテーションモデルで行います。さまざまな専門機関、国内留学・海外留学なども含めたセミオーダーメイドな研修プログラムの構築も可能です。女性医師の出産・育児に伴う、ワークライフ・バランスに配慮した、キャリア構築にも最大限配慮いたします。

精神医学と脳科学を融合して診療に還元

 診断・治療が難しいことも臨床現場ではよく遭遇します。また、精神疾患に対する周囲の理解が乏しく、ご本人が不利益を被ることも少なくありません。精神科医の一つの使命は、日進月歩で進歩している基礎医学・脳科学の知見を臨床応用して、新しい診断・治療法へと繋げて臨床医学・精神医学および診療へ還元することです。精神疾患を他の身体疾患と同じように説明可能なものにできれば、不利益を被ることが減るかもしれません。そのためには、精神科医が臨床医学と基礎医学の両者に精通し、融合する努力をし続けることが大切だと考えています。私は、bed side-to-bench・bench-to-bed sideというスタンスで、うつ病などの気分障害の病態にグリア・炎症のプロセスが関与する新しい視点から血液・髄液バイオマーカーの候補を見出し、また、抗うつ薬の新しい作用点がグリアのリゾフォスファチジン酸1受容体(LPA1)であることを見つけました。熊本大学は幸い、基礎医学が伝統的に盛んな基盤があり、分子脳科学講座などの基礎医学、他の臨床医学の教室と密に連携しながら、診療に還元する挑戦をしたいと考えています。
 熊本大学は、九州の中心に位置する熊本市にありアクセスも良く、阿蘇山・天草などの自然に囲まれ、人情に厚くとても心地よい土地です。今まさにスタートしたばかりですが、この地、熊本大学で私たちと一緒に歩みませんか?
 このサイトを訪れていただいたことが、皆さんとの出会いの一歩となることを期待しています。

平成30年8月

熊本大学大学院生命科学研究部
神経精神医学講座

教授竹林実

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熊本大学病院

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